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新型フェアレディZ(Z35)のデザイン研究

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新型フェアレディZ(Z35)プロトタイプが2020年9月16日発表となった。

9月17日から10月4日までニッサン・パビリオンに実車が展示されている。日産本社グローバルギャラリーのすぐ近くなので、行ってみてはいかがでしょうか。時代を反映した、クルマ好き、日産ファン、様々な人にとって12年ぶりのフルモデルチェンジ、新型フェアレディZ(Z35)一見の価値あり。

 

 

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サイドビューではフロントフェンダーからのキャラクターラインが緩やかにリヤタイヤに向かって落ちていき、逆にサイドステップ部が強く絞り込まれ、ウェッジシェイプとなるので、ティアドロップ系デザインとなっているが、それに繋がるリヤフェンダーが立体的に盛り上がり、上面はウェッジシェイプで跳ね上げられ、筋肉質で男性的。ハイパワーFR車であることを意識させる流麗なデザインだ。S30Zを彷彿とさせるデザインだが、並べてみるとまるで違うのが面白い。
全長4382mm、全幅1850mm、全校1310mmと発表された

 

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中央が盛り上がり、ネガ面に見えるボンネットフード。オープニングラインをここに入れてライトまで綺麗に繋げるためにはフロントフェンダーの高いプレス製造技術が要求されるはず。
エンジンは日産製V6 3000ccターボで400Rに使用されている400PS仕様、6速マニュアルと予想される
 

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リヤデザインはZであることを意識させながら、未来的であり、丸みの中にも昭和時代を彷彿とさせる角ばったエッジを効かせた独特なもの。

まるでIPhoneの画面のようにブラックアウトされたルーフは一見どこがリヤガラスなのかわかならいほど巧みにデザインされている。刀をイメージしたというアルミ調のシルバーのラインも細部までデザインされており、クルマが回転していくときの光り方はまるで本物の刀のようにシャープに見える。

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S30Zを彷彿とさせる復刻エンブレムがリヤゲートに同じく斜めに刻まれ、テールランプはZ32に通づる横長のデザインがLEDで再現されている

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CピラーにはZエンブレムも誇らしげに光る

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大胆なカーボンディフューザーもセンス良くまとめられ、400Rと同様のテールフィニッシャーが見える

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タイヤ前 255/40R19、後 285/35R19と発表された

エッジが効いたスポークの細い純正ホイールに日産の気迫を感じる。

NISSANエンブレムが控えめに小さいのも質感を向上させている。

タイヤを包み込むように下部まで回り込むフェンダーラインもZのボディデザインの質感を向上させている。

この数ミリの延長は量産車ではなかなか実現できるものだはない。

フロントフェンダーの垂直面の折り返しはリヤより狭く、後方へのボカシが上手い。1990年代の名車たちを彷彿とさせる処理でその上面のRの処理に自信がなければ実現できない。

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フロントには「Z」のロゴ入り6potキャリパーが見える。
因みにイエローは高温にさらされても最も退色が少ない色だ。

ホイールスポークは真横から見ると細いがこのように上から見ると断面はかなり厚みがある。是非、このまま製造してほしいホイールだ。

 

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このくちばしのようなフロントマスク、S30Zを彷彿とさせるものであり、リップはZ34、頬はZ33にも通ずると様々な世代のZファンに親しみを感じさせる不思議なデザインだ。
 

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新型フェアレディZ(Z35)とても興味深いモデルチェンジであり、市場の反応に注目したい。

「昔のように原点回帰したデザインにしてほしい」「ヘリテージを感じながらも新しさを織り込んだデザインにしてほしい」よくユーザー側から聞かれる意見であるが、メーカーは常にそのクルマの『未来』を観て、ユーザーの一歩先を行くデザインを提案していかなければすぐに陳腐化してしまう。しかし、ユーザーが求める二歩先を行く先進的すぎるデザインを採用すれば、理解されずに受け入れられない。

電気自動車時代に向けて邁進し、プロパイロットをはじめとして自動運転技術に積極的な日産自動車が、これほどまでにノスタルジックでコンベンショナルな車両を出してきたことは実に興味深い。これを出せるのも50周年、フェアレディZの類い希なるスポーツカーとしての歴史があってこそ出来ることであるし、これまで筆者自身も望んできたものであるが現実となった実車を見てみると、色々と複雑な思いを抱く自分にも嘘がつけない。

非常にブレーンで購入後にユーザー、チューナーがカスタマイズできる余地も上手く残されているクルマだけに車両価格がリーズナブルなものであれば86/BRZか場合によってはそれ以上に盛り上がりをみせるかもしれない。とても期待しているし、私自身も欲しい!と思う要素を多く含んだモデルとなりそうだ。しかしそれは「Z33かZ34を買ってみようかな」と思っていた自分であって、もしS30からZ32までの歴代Zを所有していたら、それを手放してまで欲しいほどの吸引力を持つか?と言われれば、乗って、走ってみるまではなんとも言えない。

現状ではあちこちにS30からZ32のテイストが入っているがゆえに「それを超えていないのではないか」と感じてしまうのだ。乗って、走れば、目の覚めるような驚きと一体感、イイ物感に溢れ、「オレは(私は)Zに乗っているんだ」というブランド感がひしひしと伝わってくるものかもしれない。信じられないほどのエンジンレスポンスとパワー感、意のままのハンドリングと乗り心地がそうさせてくれるかもしれない。それを感じて初めて、コイツ1台で行こう!と思え、S30Zの再来、あるいはZ32の再来となるだろう。やはりスポーツカーは走ってみないとわからない。

想像を超えた『技術の日産』の走りに期待して、じっと待ちたい。

 

自動車研究家
出来利弘

 

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