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NDロードスターの市販プロトタイプを初試乗

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Mazda Roadster Thanks Day in JAPAN 2nd に参加し、新型NDロードスターに試乗しました。
 
軽快感のあるスッキリした乗り味は予想以上に『良かった』
これがNDロードスターを乗った私の正直な感想だ。NDは歴代ロードスターの乗り味の延長線上にあることは間違いなく、進化もしている。
何に似ているのか?と問われればNCロードスターにコストをかけて軽量化と質感向上、熟成に時間をかけたモデルという印象だった。私はNCを『スーパーロードスター』であると語りNC研究ブログも書いたがNDはさらにスーパーとなり、これまでのRX-8あるいはRX-7クラスではないかと思うほど各部のクオリティを高めてきている。もちろん、1500cc のNAであるから、加速性能自体はそれなりだがドラテクを練習するには速すぎたNCからすれば適正とも言える。
 
乗った第一印象、それはまさにプレゼンであったこのグラフがNA NB NC NDという歴代ロードスターの立ち位置そのものを表している。
 
201532203631.jpgNDロードスターを一言で表現すれば、このグラフのイメージ通りのクルマだ。『魂動デザイン』、『SKYACTIVテクノロジー』という2つの時代をリードする武器を得たマツダがこのタイミングを逃さず、その技術を余すことなく投入したモデルだ。歴代ロードスターは旧型エンジンをベースに開発するなど妥協点があったが、NDは最新のエンジンを更にチューニングして載せ、シャシーもアルミを贅沢に使用した新設計。この高いレベルの作り込みはこれまでRX-7、あるいはRX-8の領域であったが、NDはロードスターとしては異例の作り込みによって進化を遂げている。NCでも少しその方向性はあったが今回はレベルが違う。では「NAに近くなったか?」と多くのユーザーから質問を受けたが、それは違う。もしNAに近いクルマであればこのグラフでももっとNAに近づいているだろう。ではNDは歴代ロードスターに対してどれに近いかと問われれば表の通り、最も近いのはNCであるが、その差はかなりある。これは乗った感覚も同じだ。
 
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それもそのはず、NDとNCはホイールベースとトレッド数値はかなり近く、フロントにダブルウィッシュボーン、リヤにマルチリンクを用いたサスペンション形式も同じだ。『やればここまで進化できるのか!』と驚くほど滑らかで、優しいフィーリングを持ち、『いいクルマ感』が増した。
 
ではNA/NBそのものか?それらを越えたか?と聞かれるとそれに対する返答は実に難しい。4輪ダブルウィッシュボーン式とサスペンション形式も異なるしホイールベースもずっと短い。タイヤサイズも異なる。もし点数をつけるならNDがほとんどの項目で上回るかもしれない。それほどNDは真面目に作られ、熟成し登場したモデルだ。
 
26年前、若かったNAロードスター、それが成長してNDという大人のモデルとなり、新生マツダのブランドアイコン、マツダブランドを広めるリーダー的な役割を背負って立つことなった。これまでとは『種類が違う』『背負っているもの、目指しているものが違う』ということを強く感じるのが今回の新型NDロードスターだ。まさに勢いに乗る今のマツダ商品群を象徴するモデルとなるだろう。
 
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エンジンはSKYACTIV 1.5ℓエンジン、ハイオク仕様で鍛造クランクシャフトを採用したND専用チューン。131PSを発生する。完全なフロントミドシップに搭載されており、エンジンルームはスペースに余裕が見られる。エンジン高、ストラット上部位置共に思ったより高くないので、ポップアップボンネットもあるだけにもう少し下げられてたのでは?と思うがそこ2.0ℓエンジンがあるためなのか、抑揚のあるフロントフェンダーデザインのためか?
 
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このクルマはプロトタイプのためフロントフェンダー内側カバーがなく、内部構造を確認することができた。このような形でフェンダー上部を持ち上げ支えられている。因みにこのフェンダー部も軽量化へのこだわりのアルミ製だ。
 
 
 
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もう一台のプロトタイプにはこのようにプラスチック成型のカバーが装着されていた。これによってボンネットとの隙間からエンジンルームのボルト類などが見えないように配慮するなどプレミアムカーに相応しい細部の作り込みがなされている。こういったものづくりが実践されていくのであればマツダのブランド構築は成功し、しっかりと根付いていくとこになるだろう
 
 
<NDロードスターを初試乗>
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やはりクルマは乗ってみないとわからない。
 
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早速乗り込む。ドアは軽く、スッっと開き、乗り込む前からこのクルマがライトウェイトスポーツカーであることを意識させる
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レザーを貼っていないシボ入りのプラスチックダッシュボード。ピュアなライトウェイトスポーツらしさがあり、こちらの仕様もなかなかの好印象。タコメーターがセンターとなる3連メーターとなり、ドライバーに対称な位置に配置されたエアコンルーバーなどによってコクピット感が強調されている。着座位置は低く、ダッシュボード上端の位置は高めだが手前になるにしたがって緩やかに傾斜しているので開放感は高い。ボンネット左右にはフロントストラットのキングピン延長線上にあるというコブが見える。
 
 
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エンジンはプッシュスタートボタンで行う。エンジンが始動するとブォーン!と一瞬吹け上がる演出。軽やかな音に気分が高まる。メータ左の燃料計、インジケーター周りの液晶がシンプルですっきりとしていて、なかなかいい。エンジンを空吹かししてみるとエンジンの吹け上がりは上々、吹け落ちはもうひとつだが、近年のマツダ車、そして他メーカーの車の中では早めの部類に入る。排気音が軽快で1500ccらしい、ピストンの軽さとフリクションの少なさを意識する。
 
 
クラッチの操作性は軽め、シフトを1速に入れるがこちらも軽めで現代のクルマらしく、実に入りやすい。クラッチを繋ぎ、発進する。わざとラフに扱ってもベストに回転を合わせを狙って繋いでも大きな違いはなく、誰でもスムーズに発進可能で扱い易い。タイヤの蹴り出しは軽く、とても16インチのタイヤを装着しているとは思えない軽快さを感じることが出来る。この発進時のトルクの出方、または電制スロットルのコントロールかもしれないが絶妙なセッティングだ。
 
 
まず、本革巻きステアリングの『革』がいい!触れた感触はしっとりとして、高級車に乗っている気分だが、握りは細く、硬質なのでスポーツカーらしい。最初にステアリングを切った感触はアレ?というものだった。中立付近が曖昧で切り込んでもなかなか旋回せず、大きめの舵角で90度の交差点を曲がる。クイックに切れ込むハンドリングが特徴だったこれまでのロードスターのイメージとは異なる。
 
 
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USBとAUX端子の部分はカバーが装着される。他のマツダ車はむき出しのため、使用しないときにずっと視野に入り、気になっていたがさすがブランドアイコン、ちゃんとカバーがついてきた。エアコンリングはブラックとシルバーのグレードがあるようだ
 
 
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直線を加速して2速にシフトアップ、そして回転をそれほど上げずに3速、4速とシフトしてみるが実にスムーズで滑らか。初めてのマニュアル車としても扱い易い。ちょっと肌寒い風を感じながら走る爽快感!段差を越えた際のやさしい乗り味はまさしくロードスターであり、エクステリアデザインのアグレッシブさとは裏腹に普通に『ロードスター』であった。
 
2つめの交差点、ブレーキングでは、ヒール&トゥでシフトダウンするが、オルガン式アクセルペダルはそのペダルの描く軌跡がブレーキと逆になるので、少し違和感がある。エンジンも吹け上がりは良いが吹け落ちのレスポンスに不満が残る。
ステアリングを切り込むと4WS車でトーアウトしているかのようにリヤが回りむ。これは今までのロードスターには感じらなかったもので違和感を感じた。これまでリヤのグリップ感(ある意味アンダーステア感)を頼りにブレーキングして、リヤタイヤの素直な動きを感じ取り、ドライブしてきたNA、NB、NCの感覚とは異なり、一瞬基準となる感覚を失うが、リヤタイヤに近いお尻が旋回しだしてからのオーバーステア感を感じやすい。同じようなサスセッティングであった場合に従来のNC以前のロードスターと比較してコーナー入り口で実際には安定している状態でもシャシーの安定性(アンダーステア感)を感じ取り難く、ターンインでステアリングを切ると実際にはフロントのタイヤがグリップして旋回が始まってもアンダーステア感が強く、大きな舵角を必要とするステアリング特性がそのイメージを増幅させる。ターンインが始まるとズルズルとリヤがオーバーステア感を伴って旋回する感覚を覚えるが実際のアングルは小さく、リヤは過剰に振り出されてはいない。わずか50mmの着座位置変更がこれほど影響するかはわからないが、電制ステアリング、サスペンション、ブッシュ、タイヤ、様々な要主張するハンドリングのイメージ。このリヤステアする新感覚をどう捉えるか?市販までには更なる熟成が進むのか、注目してみていきたい。ステアリングを戻しながら加速、ここでは違和感なく、気持ちよい加速が得られた。
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大きな段差を乗り越え、タイトなコーナーを少し速く旋回してみるとリヤが適度なしなりと緩さを感じさせた。リヤ周りに何か仕掛けがあるのでは?とフロアを撮影したがスタビがないことしか発見できなかった。
 
あとで解ったことだが、試乗したのはセラミックメタリックのSと呼ばれるベーシックなタイプ。
車両重量は990kgでシリーズ中、最も軽量なモデルでマツダコネクトレス、トルセンLSDレス、リヤスタビライザーレスのモデルであった。
 
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プロトタイプ試乗という貴重な機会を得たThanks Day in Japan2 だったが、速度制限もあったため、感じたフィーリングも更にハイスピード域では異なった印象となるかもしれない。
すっきりとした爽快なドライビングフィールが印象的なND初試乗だった。
 
マツダのこれまでの流れを見てもNDが実際に市販されるまでにはまだまだ更なる熟成が行われると思われる。
市販バージョンに乗れる日がとても楽しみだ。
 
自動車研究家
出来利弘
 

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