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2015年3月

NDロードスターの市販プロトタイプを初試乗

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Mazda Roadster Thanks Day in JAPAN 2nd に参加し、新型NDロードスターに試乗しました。
 
軽快感のあるスッキリした乗り味は予想以上に『良かった』
これがNDロードスターを乗った私の正直な感想だ。NDは歴代ロードスターの乗り味の延長線上にあることは間違いなく、進化もしている。
何に似ているのか?と問われればNCロードスターにコストをかけて軽量化と質感向上、熟成に時間をかけたモデルという印象だった。私はNCを『スーパーロードスター』であると語りNC研究ブログも書いたがNDはさらにスーパーとなり、これまでのRX-8あるいはRX-7クラスではないかと思うほど各部のクオリティを高めてきている。もちろん、1500cc のNAであるから、加速性能自体はそれなりだがドラテクを練習するには速すぎたNCからすれば適正とも言える。
 
乗った第一印象、それはまさにプレゼンであったこのグラフがNA NB NC NDという歴代ロードスターの立ち位置そのものを表している。
 
201532203631.jpgNDロードスターを一言で表現すれば、このグラフのイメージ通りのクルマだ。『魂動デザイン』、『SKYACTIVテクノロジー』という2つの時代をリードする武器を得たマツダがこのタイミングを逃さず、その技術を余すことなく投入したモデルだ。歴代ロードスターは旧型エンジンをベースに開発するなど妥協点があったが、NDは最新のエンジンを更にチューニングして載せ、シャシーもアルミを贅沢に使用した新設計。この高いレベルの作り込みはこれまでRX-7、あるいはRX-8の領域であったが、NDはロードスターとしては異例の作り込みによって進化を遂げている。NCでも少しその方向性はあったが今回はレベルが違う。では「NAに近くなったか?」と多くのユーザーから質問を受けたが、それは違う。もしNAに近いクルマであればこのグラフでももっとNAに近づいているだろう。ではNDは歴代ロードスターに対してどれに近いかと問われれば表の通り、最も近いのはNCであるが、その差はかなりある。これは乗った感覚も同じだ。
 
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それもそのはず、NDとNCはホイールベースとトレッド数値はかなり近く、フロントにダブルウィッシュボーン、リヤにマルチリンクを用いたサスペンション形式も同じだ。『やればここまで進化できるのか!』と驚くほど滑らかで、優しいフィーリングを持ち、『いいクルマ感』が増した。
 
ではNA/NBそのものか?それらを越えたか?と聞かれるとそれに対する返答は実に難しい。4輪ダブルウィッシュボーン式とサスペンション形式も異なるしホイールベースもずっと短い。タイヤサイズも異なる。もし点数をつけるならNDがほとんどの項目で上回るかもしれない。それほどNDは真面目に作られ、熟成し登場したモデルだ。
 
26年前、若かったNAロードスター、それが成長してNDという大人のモデルとなり、新生マツダのブランドアイコン、マツダブランドを広めるリーダー的な役割を背負って立つことなった。これまでとは『種類が違う』『背負っているもの、目指しているものが違う』ということを強く感じるのが今回の新型NDロードスターだ。まさに勢いに乗る今のマツダ商品群を象徴するモデルとなるだろう。
 
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エンジンはSKYACTIV 1.5ℓエンジン、ハイオク仕様で鍛造クランクシャフトを採用したND専用チューン。131PSを発生する。完全なフロントミドシップに搭載されており、エンジンルームはスペースに余裕が見られる。エンジン高、ストラット上部位置共に思ったより高くないので、ポップアップボンネットもあるだけにもう少し下げられてたのでは?と思うがそこ2.0ℓエンジンがあるためなのか、抑揚のあるフロントフェンダーデザインのためか?
 
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このクルマはプロトタイプのためフロントフェンダー内側カバーがなく、内部構造を確認することができた。このような形でフェンダー上部を持ち上げ支えられている。因みにこのフェンダー部も軽量化へのこだわりのアルミ製だ。
 
 
 
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もう一台のプロトタイプにはこのようにプラスチック成型のカバーが装着されていた。これによってボンネットとの隙間からエンジンルームのボルト類などが見えないように配慮するなどプレミアムカーに相応しい細部の作り込みがなされている。こういったものづくりが実践されていくのであればマツダのブランド構築は成功し、しっかりと根付いていくとこになるだろう
 
 
<NDロードスターを初試乗>
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やはりクルマは乗ってみないとわからない。
 
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早速乗り込む。ドアは軽く、スッっと開き、乗り込む前からこのクルマがライトウェイトスポーツカーであることを意識させる
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レザーを貼っていないシボ入りのプラスチックダッシュボード。ピュアなライトウェイトスポーツらしさがあり、こちらの仕様もなかなかの好印象。タコメーターがセンターとなる3連メーターとなり、ドライバーに対称な位置に配置されたエアコンルーバーなどによってコクピット感が強調されている。着座位置は低く、ダッシュボード上端の位置は高めだが手前になるにしたがって緩やかに傾斜しているので開放感は高い。ボンネット左右にはフロントストラットのキングピン延長線上にあるというコブが見える。
 
 
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エンジンはプッシュスタートボタンで行う。エンジンが始動するとブォーン!と一瞬吹け上がる演出。軽やかな音に気分が高まる。メータ左の燃料計、インジケーター周りの液晶がシンプルですっきりとしていて、なかなかいい。エンジンを空吹かししてみるとエンジンの吹け上がりは上々、吹け落ちはもうひとつだが、近年のマツダ車、そして他メーカーの車の中では早めの部類に入る。排気音が軽快で1500ccらしい、ピストンの軽さとフリクションの少なさを意識する。
 
 
クラッチの操作性は軽め、シフトを1速に入れるがこちらも軽めで現代のクルマらしく、実に入りやすい。クラッチを繋ぎ、発進する。わざとラフに扱ってもベストに回転を合わせを狙って繋いでも大きな違いはなく、誰でもスムーズに発進可能で扱い易い。タイヤの蹴り出しは軽く、とても16インチのタイヤを装着しているとは思えない軽快さを感じることが出来る。この発進時のトルクの出方、または電制スロットルのコントロールかもしれないが絶妙なセッティングだ。
 
 
まず、本革巻きステアリングの『革』がいい!触れた感触はしっとりとして、高級車に乗っている気分だが、握りは細く、硬質なのでスポーツカーらしい。最初にステアリングを切った感触はアレ?というものだった。中立付近が曖昧で切り込んでもなかなか旋回せず、大きめの舵角で90度の交差点を曲がる。クイックに切れ込むハンドリングが特徴だったこれまでのロードスターのイメージとは異なる。
 
 
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USBとAUX端子の部分はカバーが装着される。他のマツダ車はむき出しのため、使用しないときにずっと視野に入り、気になっていたがさすがブランドアイコン、ちゃんとカバーがついてきた。エアコンリングはブラックとシルバーのグレードがあるようだ
 
 
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直線を加速して2速にシフトアップ、そして回転をそれほど上げずに3速、4速とシフトしてみるが実にスムーズで滑らか。初めてのマニュアル車としても扱い易い。ちょっと肌寒い風を感じながら走る爽快感!段差を越えた際のやさしい乗り味はまさしくロードスターであり、エクステリアデザインのアグレッシブさとは裏腹に普通に『ロードスター』であった。
 
2つめの交差点、ブレーキングでは、ヒール&トゥでシフトダウンするが、オルガン式アクセルペダルはそのペダルの描く軌跡がブレーキと逆になるので、少し違和感がある。エンジンも吹け上がりは良いが吹け落ちのレスポンスに不満が残る。
ステアリングを切り込むと4WS車でトーアウトしているかのようにリヤが回りむ。これは今までのロードスターには感じらなかったもので違和感を感じた。これまでリヤのグリップ感(ある意味アンダーステア感)を頼りにブレーキングして、リヤタイヤの素直な動きを感じ取り、ドライブしてきたNA、NB、NCの感覚とは異なり、一瞬基準となる感覚を失うが、リヤタイヤに近いお尻が旋回しだしてからのオーバーステア感を感じやすい。同じようなサスセッティングであった場合に従来のNC以前のロードスターと比較してコーナー入り口で実際には安定している状態でもシャシーの安定性(アンダーステア感)を感じ取り難く、ターンインでステアリングを切ると実際にはフロントのタイヤがグリップして旋回が始まってもアンダーステア感が強く、大きな舵角を必要とするステアリング特性がそのイメージを増幅させる。ターンインが始まるとズルズルとリヤがオーバーステア感を伴って旋回する感覚を覚えるが実際のアングルは小さく、リヤは過剰に振り出されてはいない。わずか50mmの着座位置変更がこれほど影響するかはわからないが、電制ステアリング、サスペンション、ブッシュ、タイヤ、様々な要主張するハンドリングのイメージ。このリヤステアする新感覚をどう捉えるか?市販までには更なる熟成が進むのか、注目してみていきたい。ステアリングを戻しながら加速、ここでは違和感なく、気持ちよい加速が得られた。
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大きな段差を乗り越え、タイトなコーナーを少し速く旋回してみるとリヤが適度なしなりと緩さを感じさせた。リヤ周りに何か仕掛けがあるのでは?とフロアを撮影したがスタビがないことしか発見できなかった。
 
あとで解ったことだが、試乗したのはセラミックメタリックのSと呼ばれるベーシックなタイプ。
車両重量は990kgでシリーズ中、最も軽量なモデルでマツダコネクトレス、トルセンLSDレス、リヤスタビライザーレスのモデルであった。
 
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プロトタイプ試乗という貴重な機会を得たThanks Day in Japan2 だったが、速度制限もあったため、感じたフィーリングも更にハイスピード域では異なった印象となるかもしれない。
すっきりとした爽快なドライビングフィールが印象的なND初試乗だった。
 
マツダのこれまでの流れを見てもNDが実際に市販されるまでにはまだまだ更なる熟成が行われると思われる。
市販バージョンに乗れる日がとても楽しみだ。
 
自動車研究家
出来利弘
 

NDのデザインを研究する NDロードスター研究 3

 

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<FRはハイパフォーマンスカー的なデザイン>
9月4日舞浜でNDロードスターのデザイン発表会で私たちの前に姿を現した時、先入観なく、直感的に感じたものは『ビックトルク、ハイパフォーマンスカー』のエクステリアデザインというものだった。野獣が今にも獲物に飛びかかりそうなデザイン。躍動的であり、新しい魂動デザインの方向性を示すものであると感じた。同時に『あのボンネットの長さ、厚さならエンジンは直6エンジン?いやいやV6 3000ccくらいか!? いやそんなはずはないから、直4 2000ccエンジンで200PS以上か!?』とも感じた。ロングノーズ&ショートデッキはハイパフォーマンスカーの象徴だからだ。魂動デザインは特にアテンザ以降、Aピラーを後方へと引き、FF車にFR的なプロポーションを与えることで斬新さとスポーティさを演出し、それが『新しいマツダデザイン』として市場から支持を得てきた。今回はどんな提案で来るのか注目される中、FR車であるロードスターも更にAピラー70mm後退させるデザインコンセプトへ変更し、それはハイパワーFRマシンを彷彿とさせるデザインとなった。それは同時にライトウェイトFRの王道を行くロードスターのドライビングポジションとの決別をも意味する。ドライビングポジションは約50mm後退した。これは歴代ロードスター初の試みで新型NDロードスターのデザイン、そして走りをひも解く際の大きなポイントとなる。新しいロードスターのデザインはこれまでのNCまでのものから大きく路線変更した。

プロトタイプ車のホイールベース(-15mm)はNC比較でかなり近い数値を保持しているので横から見た際には相対的にフロントタイヤが前へと出た印象を与えるデザインとなっている。

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<MX-7と呼びたい新型NDロードスター>
『実際の寸法よりも大きく見えるデザイン』それが新型NDデザインの狙いだ。特にフロント周りはその傾向が強く、ハイパフォーマンスカーの走りを予感させるデザインだ。フロントエアダクトは歴代ロードスターで最も開口部が大きく、左右のヘッドライト、左右のダクト(LED)に向かって放射状に広がるデザインはワイド感、ワイルド感、精悍さを強調したもので歴代ロードスターが守ってきたコンパクト感、愛らしさ、親しみ易さを持った癒しのデザインとは趣が異なると感じた。
前後のフェンダーの膨らみはストラット式サスペンションのを彷彿とさせるほど盛り上がっているが、実際にはダブルウィッシュボーン/マルチリンク式サスペンション。十分なストローク確保のためだろうか。

「ロードスターは大人っぽく、立派になったねえ。可愛い感じじゃないけどね」イベント当日、同行した私の父がふと語った一言が印象的だった(父は25年前、ロードスターを買おう!と強く私に勧めてくれた)。カーデザインは個人の趣味趣向によって大きく左右されるものであり、『そのクルマをどう着こなすか』にもかかってくるものなので一概には言えないが、私はNDロードスターのデザインから荒々しく野性的な乾いたエンジンサウンドを想像した。また腕に覚えのあるもの以外を許容しないじゃじゃ馬なハンドリングであるのではないかと感じた。それはまたハイパワースポーツの魅力であり、次はコルベットかフェアレディZなどのちょっと大人で獰猛そうなハイパフォーマンスカーを所有してみようかと思っていた私の気持ちにぴったりとくるものだ。ちょっとアメリカンなワイルドさと大人な雰囲気のNDロードスターなら『そろそろロードスターから卒業かな?』と思っていたファンも次の愛車として選択肢に入るし、これまで輸入車やフェレディZなどに乗っていたようなユーザーをも取り込むことができるかもしれないデザインなのではないだろうか。つまりこのデザインはロードスター以上RX-7未満であり、レシプロを搭載したRX-7的なクオリティとデザイン、それはもはやMX-5ではなく『MX-7』と名乗るに相応しいとさえ感じられる。

 

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リヤデザインは後方に行くほど絞り込まれたティアドロップデザイン。フロントが大きく見えるのに対してリヤはコンパクトに感じられる。デールランプは初代NAと同じ距離間に丸型を収め、それによって相対的にボディのワイド感は強調され、安定して吸い付くように走るイメージが膨らむデザインだ。実寸ではかなりあるトランクの厚みもこのデザインによってそれほど気にならない。

<なぜ2000ccのNDロードスターは販売されないのか!?>
新型NDロードスターは北米、ヨーロッパでは2000ccモデルが存在するが、日本では1500ccモデルのみが販売される。スカイアクティブ1500ccエンジンは日本では必要にして十分なパワーを持つだろう。私はこのデザインで1500ccエンジン車を購入するファンを認めるし、それで満足できるならばきっと楽しいロードスターライフが送れるであろう。しかし私がNDに乗るならば、なるべく大きな排気量のモデルを選び、可能な限りのパワーを絞り出して乗ってみたい。その方がこのNDデザインのクルマと私(クルマと人)のバランスが取れるのではないか?と今は思っている。やはり2000ccモデル、あるいはそれ以上のハイパワー、ビックトルクエンジンの登場を待ちたい。

「おいおい、ロードスターは1600ccクラスの小排気量であってこそライトウェイトスポーツだろう!出来は解っていないなあ」という方もいらっしゃるだろう。私もそう理解しているし、同意見だが、それならばボディデザインはもう少し、小さく見えるライトウェイトスポーツ(LWS)らしい、小排気量モデルを連想させるものであって欲しい。日本向けに1500専用の前後バンパーとデザインアレンジをオーダーしたい。デザインの良し悪しを語っているのではなく、バランスの問題。今のままのデザインとパッケージングは1500cc直4エンジン搭載モデルとしていささかオーバークオリティではないだろうか。

 

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MX-5  GLOBAL CUP
それを実感させてくれたのがこのMX-5グローバルカップカーの存在だ。北米マツダで発表されたこの車両はレースベース車でSKYACTIV-G 2000cc 4VALVE DOHCエンジンを搭載するマシン。レースカーとして軽量化され、その内に秘めたパフォーマンスとエクステリアデザインのバランスがとても良くマッチングしていると思う。

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レース、そしてサーキットベースで考えるとショートオーバーハングも完全フロントミドシップを目指したデザインも説得力が増す。アルミを贅沢に使った軽量化も意味をなす。レース用に不要なものが取り外され、更なる軽量化をしたこの姿。これこそ新型NDロードスターと感じるバランス感覚である。

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快適装備を外し、簡略化したカップカー仕様のベースとなるようなモデルをナンバー付きでも是非、販売して欲しい。そんなバージョンがあれば私も是非、所有してみたい。もし、今のNDプロトタイプのまま乗るのであれば2000ccのチューニングエンジンかまたは過給器や排気量アップによる更なるパフォーマンスアップこそ相応しいのではないか。私がNDロードスターのデザインに感じたのはそういう雰囲気だ。

 

自動車研究家
出来 利弘

 

NDロードスター研究 2
http://www.d-technique.co.jp/magazine/2015/03/nd-2015new-nd-roadster-mx-5.php
NDロードスター研究 1
http://www.d-technique.co.jp/magazine/2014/09/nd-1.php

 

 

新型NDロードスター 2015の生産開始を発表!試乗前に NDロードスターを研究 2

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マツダは新型ロードスター(ND) を2015年3月5日、生産を開始したと発表 
今年6月頃に国内での販売開始を予定しており、3月20日(金)正午からWEBによる先行商談予約を開始する。

話題の新型NDロードスターの生産が遂に開始された。それは新型ロードスターが街を走り始めるまで多くの時間を要さないことを意味する。ロードスターはオープン2シーターのFRライトウェイトという特殊で趣味性の高いスポーツカーでありながら25年、四半世紀以上に渡って販売され、高い人気を保持し続けた異例の作品である。ロードスター(MX-5)は世界中のクルマ好きに認知されているマツダの代表的なスポーツカーであり、日本が世界に誇る『名車』のひとつと言って過言ではないだろう。
今回の新型NDロードスターはその歴史と伝統をただ単に踏襲するのではなく、ドラスティックに変えることでこのライトウェイトスポーツの価値を世に問う道を選択。マツダの持てる先進技術を惜しみなく投入し、徹底的に作り込みを行った意欲作だ。

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NDは『ドライバー』を中心にクルマをデザインが進められた。これはスポーツカーのデザインとしてはとても珍しい。通常スポーツカーは走りを重視するためにメカニズム、レイアウトを優先で設計され、それに対して美しいデザインでまとめられるとドライバーのスペースや位置関係は犠牲になることが多いが、NDロードスターはそうではない。マツダが目指す理想のスポーツカードライビングポジションと空間設計が行われ、それを最新の魂動デザインでまとめ上げた。このスタイル実現へ向け、全てのメカニズム、レイアウトが創意工夫され、開発された。ワイドで迫力のあるフロント部から流れるようなラインで構成されたティアドロップ形状のフォルムはボディ後端へ向かうに従って一気に絞り込まれ、キュートでコンパクトなリヤビューの雰囲気を醸し出している。このデザインによって、空力性能の向上はもちろんのこと、幌部のドライバー頭上空間、トランクフードなどの小型軽量化も可能であろう。ボンネット左右の膨らみはインテリアのカラードアトリム上部へと繋げるなどオープンカーならではのデザイン手法を各部に取り入れた。
前後のオーバーハングは可能な限り短く切り詰められ、上方、側面、斜めとどの角度から観ても台形フォルムとなる絞り込みによって、安定感のあるスポーツカーらしいフォルムを実現している。

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インテリアデザインは『ドライバーを中心に左右完全対称デザイン』となっており、左右の丸形エアコンルーバーでそれを強調する。タコメーターは歴代で初めてセンターに配置され、スポーツ性を強調。ステアリングのエアバックは世界最小の新デザイン。マツダコネクトは上級モデルに装着。マツダの持つ上質なインテリア加飾が全て投入されている。それはアルミ調パネル、カーボン調パネル、ピアノブラック、シルバーメッキ、本革、ステッチ入りソフトレザーパッド、ボディ同色パネル、シボ入りプラスティックパネルと実に8種類に及ぶ。
ドライビングポジションはとても自然なペダルレイアウト、ステアリングセンターと先代から更に下がった着座位置となり、長身のドライバーでも苦にならない空間作りがなされている。また写真のように着座位置からはボンネット左右の膨らみが見られる。

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 3次元の複雑なラインを描くNDロードスターの前後のフェンダー

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ワイド&ローを強調したデザインのフロントマスク。ノーズの先端は低く、スポーツカーらしい鋭く野性的な表情となった。超小型LEDヘッドライトの採用によって短いオーバーハング内にライトを収めた。

 

新型NDロードスターのサイズは全長3915mm × 全幅1730mm × 全高1235mm 、ホイールベース2315mmと発表されている。これは歴代ロードスターで全長が最も短く、全幅は最も広い。ホイールベースは僅かに短縮されているが、トレッド&ホイールベースの比率はNCロードスターのそれに近く、少しワイド&ショートというものだ。全長の短縮の多くはオーバーハングの切り詰めによるもので、新型モデルがダウンサイジングを行うのはとても珍しく、マツダがロードスターのデザインと走りに賭ける拘りと情熱が伝わってくる。
サスペンション形式はフロントはダブルウィッシュボーン、リヤはマルチリンクを踏襲。シャシースペックはNCに近いが全てが新設計とされ、軽量化と性能追求に拘っている。

 

新型ロードスター生産開始のリリース
http://www2.mazda.com/ja/publicity/release/2015/201503/150305b.html

マツダ、新型「マツダ ロードスター」の生産を開始

 

 

 マツダ株式会社(以下、マツダ)は本日、本社宇品第1(U1)工場で2シーターのライトウェイトオープンスポーツカー 新型「マツダ ロードスター(海外名:Mazda MX-5)」の生産を開始しました。このたび生産を開始した新型「ロードスター」は日本向けです。今年6月頃に国内での販売開始を予定しており、3月20日(金)正午からWEBによる先行商談予約を開始いたします。また、海外市場への導入は、日本に続いて順次行う予定です。

 

新型「マツダ ロードスター」の量産第一号車(日本仕様車)
新型「マツダ ロードスター」の量産第一号車(日本仕様車)

 

 「ロードスター」は、「走る歓び」を追求するマツダのクルマづくりを象徴する商品です。2015年1月末までに累計生産台数は95万台を超え、「2人乗りスポーツカー販売台数世界一」のギネス認定記録を現在も更新し続けています。

 

 4代目となる新型「ロードスター」は、年々高まる環境・安全性能への要求に応えつつ「Fun(楽しさ)」を継承するために、「守るために変えていく」をキーワードに開発されました。「SKYACTIV技術」とデザインテーマ「魂動(こどう)-Soul of Motion」の採用に加え、「人がクルマを楽しむ感覚」の向上に注力しています。

 

 今後もマツダは、高品質なクルマづくりを含め、お客さまとの様々な接点を通じて、お客さまの人生をより豊かにし、お客さまとの間に特別な絆を持ったブランドになることを目指してまいります。

 

■新型「マツダ ロードスター」先行商談予約に関するニュースリリース

http://www2.mazda.com/ja/publicity/release/2015/201502/150205a.html

 

■新型「マツダ ロードスター」プレサイト

http://www.roadster.mazda.co.jp/pre/

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エンジンは1.5ℓ SKYACTIV-G 直噴ガソリンエンジンをフロントミドシップに搭載。ライトウェイトスポーツカーらしい走りを目指し、エンジン内部に改良を加えている。

新型NDロードスターは現代の安全性能、環境性能などの条件の中、新時代のスポーツカーを提案するマツダの意欲作だ。最先端の軽量化技術、シュミレーション技術を駆使して開発され、理想のライトウェイトスポーツカーの楽しさを目指している。歴代ロードスターは熟成されたエンジンを搭載していたが、今回のNDは最新SKYACTIVエンジンを更に改良した最新エンジンを搭載いている。直噴高圧縮エンジン、アイドリングストップ機構など現代に求められる燃費性能をクリアしていることは容易に想像できる。アルミを多用したボディ&シャシーによる軽量化は1000kgを切る車重を目指して開発されている。軽量化は運動性能と実用燃費の両面で有利に働く。

待ちに待った(待たされた)新型NDロードスターだが、歴代ロードスターで最もコストをかけ、最も走って熟成されたというその走りがどんなものなのか!? 市販バージョンのNDロードスターのステアリングを握れる日まであと少しだ。

自動車研究家
出来 利弘

9月4日 NDロードスター研究1
http://www.d-technique.co.jp/magazine/2014/09/nd-1.php