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次期NDロードスターにはパワステなし車、パワーウインドなし車、エアコンなし車は存在しない

2014526213210.jpg『パワステレス、パワーウインドレス、エアコンレスのグレードは新型NDロードスターには、いずれも現時点では存在しない』ことが、5月25日(日)ロードスター軽井沢ミーティング2014会場での開発者トークショーにおける開発主査、山本修弘氏の発言から明らかとなった。
 
25thアニバーサーリーNCと新型NDロードスターのベアシャシーの展示など話題が豊富な今年の軽井沢ミーティングは、北は北海道から南は沖縄まで歴代最高となる2000人を超すロードスターファンと多くの報道陣も詰めかけた。
開発者トークショーでは次期NDロードスターに対する質疑応答が注目を集めたが、着座位置やエンジン、デザインなどユーザーから質問があったが開発陣の回答は「ご想像にお任せします」「みなさんの思い描くロードスターはどんなものか、私たちは理解しています」と繰り返されるばかりで、事情は解るものの、ファンの納得する回答とはいいがたいものだった。

そこで私は質問ではなく『提言』をすることで山本主査から次期ロードスターの方向性を聞き出そうと考えた
 
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「難しいのは解りますが、好調なマツダなのですから、新型NDロードスターに是非、パワステなし、パワーウインドなし、エアコンなしのシンプルなグレードを追加設定していただけないでしょうか」との私の投げかけに会場からは大きな拍手と応援をいただき、この意見を指示するファンが少なからず存在することを確認することが出来た。
特にノンパワーステアリング(通称、重ステ)の要望に対して山本主査は強く反応し、会場にいた参加者に「パワステのないロードスターのメリットって何かありますか?」と問いかけ、メーカーとユーザーとの間で活発に意見交換が始まった。

M2車両をノンパワステで乗っているオーナーは「路面状況やタイヤの状態が手に取るようにダイレクトに解る」と語り、新車でNAを購入し、今も大切にされているオーナーは「当時試乗して、クッ!と曲がる感覚に感動して、ノンパワステの標準車を選んで購入した」などパワステのないクルマの持つ素晴しさについて語るなど、次々に意見が飛び出した。
山本主査の表情や言葉から、現時点ではこれらの装備を持たないシンプルなグレードが存在しないと会場にいた誰もが感じたことだろう。同時に新型NDロードスターが現時点で向かっている方向性やスタンスを垣間みることが出来る有意義なミーティングとなった。
 
パワステレス車は『現代のクルマが失ってしまった』自然なステアリングフィールとダイレクト感が魅力だが、デメリットとしては駐車時の据え切りやスポーツ走行時に時折ステアリングを重く感じることがあることだ。確かに万人向けとは言えないが、シンプルにNA時代への原点回帰を目指すNDロードスターのイメージリーダー的存在としても是非、素のNDロードスターが『旧き佳きフィーリングを楽しめるクルマ』を現代の技術で蘇らせるという『ロードスターでなければ実現が難しいもの』を追い求め、本当の意味での『NA原点回帰』を果たしてくれたらどんなに素敵だろうか。
 
 
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1. 車両重量の問題
例えば86/BRZにはエアコンレス車は存在するがノンパワステ車は存在しない。車重1200kg以上となれば、さすがにパワーステアリングが必需品となるが、次期NDロードスターは1000kgを切る可能性があり、しかもフロントミッドシップのために前軸荷重は500kg以下となり、ノンパワステでもなんとか快適にドライブ可能だ。究極のグラム作戦と50:50の重量配分を持つ『ライトウェイトスポーツカー』のロードスターで設定できなければ、世界中の量産スポーツカーから、ノンパワステ車が絶滅してしまう。
 
2. オープンカー専用モデルだから許されるエアコンレス
ロードスターは自然の風を受けて走る『オープンスポーツ』であり、セカンドカーとして気候の良い時期にだけ乗るオーナーも多く、実際にM2車ではエアコンレスのまま乗り続けられているクルマが多く存在する。またエアコンベルトがない負荷軽減でエンジンレスポンスが格段に向上するのは小排気量NAならではだが、多くのユーザーは体感したことがない。モータスポーツベース車でなくても設定が許されるのもロードスターならでは。
 
3. 手回しのウインドレギュレータ
『シンプルでノスタルジックなクルマに乗りたい』そんな欲望を満たしてくれるのも初代ユーノスロードスター(NA)の魅力だった。プラモデルのように自分だけのロードスターを作りあげていくように楽しみ、『旧車っぽいもの』『クルマの原点っぽいもの』を目指すNAファンは世界中に多く存在する。しかし、NB、NCではそういった楽しみ方をするユーザーは圧倒的に少数派だ。理由は多々あるだろうが、内装にマニュアルウインドレギュレータの設定がない(NB前期には一部あったが・・・)ことも原因のひとつではないかと考えられる。レス仕様をユーザーやショップが製作するのは不可能に近い。手回しで窓を開け、『不便さを楽しむ』。便利装備の溢れるデジタル時代だからこそ、昔あったアナログで『シンプルなモノ』が無性に欲しくなるのではないか。
 
 
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『ロードスターの存在意義』それはなんだろうか。
次期NDロードスターにとって一番の脅威は中古車のロードスターだが、NAロードスターはさすがに古く、旧車の域に入ってきている。次期NDが現代の信頼性、安全性、燃費性能などを備えた上で『本当の意味での原点回帰』を行い、NAロードスターを彷彿とさせる『シンプルさ』で表現できれば、再びライバル不在の存在となり得る可能性を秘めている。

初代ユーノスロードスター(NA)が持っていた最大の魅力は『自分なりのクルマとの付き合い方を選択できること』だったのではないだろうか。前序の3つの不便なレスオプションが存在することで、自分なりのチョイス、スタイルを表現するきっかけとなり、ロードスター購入のための妄想は広がった。
「まずはエアコンは着けるでしょ〜。それからパワステ、パワーウインドも着けようかなあ」という風に独り言をいいながら、カタログを眺めた。エンジン、ミッションなどクルマのオプションは『機械としての原点に近いもの』ほどワクワク、ドキドキするものなのではないだろうか。販売の結果を見れば上記3つのレスオプションを選択する人は少数派かもしれないが、『なんか楽しそうだ』と次期NDロードスターに注目するファンは増やす効果はあるのではないか。
 
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もともと採算や効率を突き詰めていけば、スポーツカーやロードスターの存在意義すら危ういはず。本当の意味の『原点回帰ロードスター』へ向けた更なる『シンプルさの追求による軽量化』の中には現代に要求される『安全性と環境性能』に影響を与えず、大幅な軽量化が行えるものもある。
マツダはアテンザの新規マニュアル開発でセダン復権を印象づけ、スカイアクティブ技術でディーゼルブームの火付け役となるなど、誰もが諦めかけたシンプル路線を切り開き実現してきた。また今回は軽井沢ミーティング会場でリサーチするために多くのスタッフが訪れるなど、ユーザーの意見を大切にしているマツダだけに今後行われる次期NDロードスターの仕上げと最後の開発がとても楽しみだ。
 
 
 
自動車研究家
出来利弘
 
 
 
 
 


 
 
 
 
 

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